恋じゃない

最近よく会う目黒さん。2年前から知っていたけど、初めて2人で会ったのは1ヶ月半前。


仲間内では有名な女たらしで、というよりモテるので本人が何もしなくても女性が寄って来るらしいんだけど、実際わたしと仲のいい女性達の中で彼のことを好きな人は今現在3人いる。その3人を含めて、共通の知人女性とは全員寝てる。とんでもないスケコマシというかなんというか、もうなんなんだよあいつ。人外魔境。
ルックスは普通だけど、女好きで話が上手くて頭がよくて男からも好かれてて、厳しいことも言うけど信念があって人情に厚い。(ついでに金も持っている)


そんなモテる目黒さんがよくわたしを誘ってくれるのは、多分気が楽だからだ。他の、彼を好きな女の子ともデートするしやることやってるようだけど、わたしは好きだとか付き合って欲しいとか言わないから。 
ナルシストな目黒さんは、当然龍堂は自分のことを好きなんだろうって思ってる。俺に惚れてんだろうって、言う。好きじゃないって反発しながらもこっそり他の女に嫉妬したりしてるわたしを知っている。
皆といる時はなんでもないって顔で他の女と寝た話をするくせに、ふたりきりで映画を見に行くと恋人みたいに2時間ずっと手を繋ぎっぱなしで、ご飯食べるときは男友達みたいにわたしを呼び捨てにして、でも当たり前のように迷いなくホテルに入る。


浮気の罪悪感から逃れるために、上野さんとは別れた。あんなに大事にしてくれたのに。好きだって、言ってくれたのに。同じ気持ちを返せない申し訳なさでわたしは泣いた。


だから目黒さんなんか好きになんかならない。ちょっと惹かれてるけど、それはきっと彼がモテるが故に独占欲や優越感を満たしてくれるなんてどうしようもない理由からで、精力と人間の生命力を感じさせてくれる存在だからで、わたしはわたしにないものを求めているだけだ。
なのに胸がざわざわして苦しい。あいつはきっと、また今夜も他の女と一緒にいるんだろうな。
簡単に惚れないし気安く好きだなんて言わないけど、気になってしょうがないってこと、ちょっとくらいはばらしてもいいかな……。
そうしたらきっとあいつは、へえーって笑って流して、心の中ではそんな感情一時の錯覚だよって思いながらわたしを抱いて、次の日にはまた別の人と寝るんだろう。